パコーン パコーン
 
自由練習の合間に聞こえるテニスボールの軽快な音がする。
 
壁打ちをしているこいつに、あたしはいつも惑わされる。

普段はすごく性格悪いのに、テニスをするときだけはすごくかっこいい。
 
くそぅ、悔しい。
 
大体なんであたしがこいつのマネなの?理不尽すぎる。でも、何であたしはこんなにドキドキするんだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Love Forever



 
 
 
 
 
 
 
「ねぇ、そんなに凝視されると気が散るんだけど」
 
「は?」

 
あたしはそんなに見ていただろうか。というか殺気を放っていたのかしら?
 
うん、凝視じゃないよ。凝視なんかするわけない。うん、ありえないから。
 
 
「凝視してないっつーの!殺気を放ってただけ!」
 
 
あのキス事件以来、あたしはあからさまに越前を意識し始めて、いつの間にか目で追うようになってた。

というかファーストキスだったのに。何が責任とってあげるよ、よ!越前なんかに責任とってもらわなくたって、平気なんだから!
 
大体やること言うこと生意気なんだよね。というか同い年なんだけど。さすが帰国子女というべきか。
 
余裕な態度が気に食わないっていうか、むかつくというか、でも気になるっていうか。

違う、気にならない。気にならない。気になるのは帰国子女の態度のせい。そう、帰国子女だから気になるんだ。
 
 
 
「というか、越前はレギュラーなのになんで壁打ちすんの?」
 
 
 
今は自由練習。自由練習中、レギュラーはコートを自由に使っていいはずだ。
 
なのに、越前は自分から先輩に練習を申し込んだりしない。
 
あ、たまに桃先輩誘ってるか。手塚先輩とか大石先輩たちとかは…?
 
先輩たちと仲悪い?や、でも話しかけられたりはよくしてる。
 
……笑ってるところは見たことないけど。あの、勝ち誇ったような笑み以外は。
 
 
「壁打ちは基本。」
 
 
何コイツ。コイツこんなに上手いのに、まだ基礎練してんの?
 
え、なんかイメージが崩れる。
 
ばんばん必殺技とか編み出して、全然苦労してないように見えたのに。
 
このテニスの上手さは天性のものだと思ってたのに。
 
 
 
 
「なんかすごい意外…」
 
 
 
 
なんでも出来て、苦労しなさそうなイメージが、越前と一緒にいることでだんだんと崩れていく。
 
見えないところですごい努力してるんだろうな。越前は。というか、先輩もそうだよね。
 
越前だけじゃない、ってことか。
 
でも、なんかしてあげたいな。マネージャー、すごく嫌だったのに、頑張ってるところ見たら応援したくなる。
 
 
 
 
「あ、。」
 
 
「はい?」
 
 
「明日、弁当作ってきて。和食で」
 
 
 
 
前言撤回。応援したくなんか、なりません。なんであたしが越前の弁当を作らなくちゃいけないの!
 
多分、越前の頭の中では「応援する人=パシリ」の構造が成り立っていると思う。
 
……なんっつーわがまま!朝、自分お弁当作ってるから別に特に問題はないけど。
 
だけど!!なんっか気に入らない!
 
でも、あたしには「嫌」ということが言えない。弱みを握られているのは本当に辛い。
 
 
 
 
「……わっかりました!!!!」
 
 
 
 
「あ、そんで俺のリクエストがあ………」
 
「リクエストなんて受け付けません!あたしの好みで作ります!」
 
 
 
 
 
 
これ以上なにも言わせまい。リクエストなんて受け付けてられるか。
 
っていうかあたし主に和食しか作れない…。
 
越前が洋食好きだったらどうしよう。ま、あたしの好みで作るって言っても何も言わないし。
 
そこらへんは気にしなくてもいっか!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そして、隠れて聞いていた桃と那智は……
 
「おいおい、いーよな、越前は」
 
「お?桃ヤキモチ?」
 
「ちげーよ!や、ちげくないけど。那智は弁当作ってくんねーんだもんな。さみしーよな、さみしーぜ」
 
 
「そんなことはどうでもいいけど、越前君ってちゃんのこと好きだよね」
 
「さっ、さぁな。おっ、俺は知らねーよ。まぁ、越前があれだけ興味示してるのは珍しいけどな」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こうしてリョーマのに対するわがまま行為はエスカレートしていくのである。
 
 
 
 
 





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