顔を上げると、そこに居たのは



紛れもなく、くんだった。




fall in love -11th-






「あーごめん、今暇?」



え、ちょっと待ってってば。くんがあたしに話しかけてる??え、あたし?



ちょちょ、ちょい待って?何で??あたし何かした?



「あーうん、平気だよ」


「良かった」



そう言いながら、爽やかな笑みを浮かべるくん。



---きっと、これは表の顔で、彼女にはもっと優しいんだろうな



そんなことを考えてしまうあたしは、かなりの重症。





「あんさ、この間の彼女じゃないから」





ああ、もうそんなの聞きたくないよ。あたしはそんなのバラさないってば。



秘密に付き合ってんでしょ?あたし別れさせようとか、思ってないから。



あんな可愛い彼女じゃ、あたしと正反対の彼女じゃ、「無理」ってのちゃんと分かってるから。







「あー大丈夫だよ、あたし。誰かに言ったりしないから」






何であたしはこんなにも、辛い恋をしてるんだろう。何でこんなにも、切ない恋をしてるんだろう。



くんもさ、少しはあたしのこと信頼してくれてもいいじゃん。そんなに口軽そう?



てゆーか彼女って言ってもらえたほうがすっきりするし、納得のいく諦め方ができるし…




「そっか。てゆーか俺、もっとさんともっと話してみたいな」




へへへ、と笑うくんはいつもの大人びたくんじゃなくて、いたずらっこのように可愛いかった。



男の子に「可愛い」っていう表現は、間違ってるのかも知れないけど、ね。






「あたしもくんともっと話したいな」






とだけ、返しておいた。だって、彼女さんに悪い気がして。



友達、とも言えない関係のあたしたちが、こんな会話をしていて。



きっとあたしが彼女になったら、寂しがるんだろうな、と思ってみたり。







あたしが彼女になるなんてあり得ないと、分かってはいるけれども。





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