本当に偶然だった。




あの笑顔に出会えたのは。





くんに出逢えたのは。









fall in love -1st-










「ちょ…!!ドコにいればいいの!?」




「あぁ、お前はどこでもいいよ。」





こいつ、自分から試合見に来いって言っときながら、何この態度!失礼極まりないし。




試合が始まるまでは1時間くらいあるし、散歩でも行こっかな・・・。選手はウォームアップしてて暇だし。




ということで、試合会場となる運動公園をぐるりぐるりと散歩することにした。会場出たらもう入れないし。




にしてもホント暇だよ・・・、も来る予定だったんだけど、塾の補習が入って無理になって。




せっかくと話せるチャンスだったのに。(あたしは別になんでもいいんだけど!)




何でなんかが好きなんだろ。確かに優しいけど、つまんないじゃん。やっぱ恋は盲目ってやつかな!笑




それにしても・・・ってホントに謎なんだけど。何で3年になっていきなり「試合来い」何て言うの?




今まで1回もそんなこと言わなかったのに。2年の時だってスタメンだったじゃん。




・・・あ、って目当てだったりして?そうだよ、だって今日あたし1人で来た時、周りキョロキョロ見渡してたし。




絶対そうだ!の弱み握っちゃったー・・・なんて考えてたら、思わず顔がニヤニヤしちゃって。




ニヤニヤしたまま歩いてたら(危ないな!笑)真正面から走って来た男の子にぶつかって。




あたしは見事に後ろに吹っ飛んで、何があったか分からなくて、ただ呆然としてた。




「ごめん!大丈夫!?」




という声と同時に、大きな手が差し出されて、あたしもその手を握った。




その人は制服姿で、すごい顔真っ赤にして、すごい汗かいてて。多分遅刻しそうになって走ってきた。




(だって持ってるエナメルバックが変形してるんだもん!笑)




「あ、大丈夫・・・」




「俺1試合目なんだけど遅刻しちゃって」




アップだと思って走ってたらぶつかっちゃって・・・と弁解する彼。まだ息も上がったまま。汗も流れてる。




ホントごめんね、って言いながらまた走り去って行った。一体何だったんだろ?と考えながら、あたしはスタンドに戻った。




試合開始15分前の出来事だった。




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東堂中と、星城中の試合。結果は4-1で星城中の勝ち。




決してあたしの学校の動きが悪かったわけじゃない。他の学校に比べたら、断然良かった。




だけど、星城中が強すぎた。あたしでも分かる。相手が悪かった。




東堂中の1点は、キャプテンが入れたんだけど・・・星城中の4点は、全部同じ人が入れてた。




あたしが、さっきぶつかった人。試合開始15分前に、やっと会場に来た人。




後ろの観客の人たちの話で分かったんだけど、あの人がって人だった。あの有名な。から聞かされてた。




本当にすごかった。言い表せないくらい。巧みなボール使いで、何人も抜いていって。




だからと言って、ずっと1人でボール持ってるわけじゃないのに、得点を決めるのは全部あの人。







得点を決めたときの、くんの笑顔。拳を握り締めて、やったぞ、と仲間と抱き合って。




釘付けだった。くんしか見てなかった、と言っても過言じゃないかもしれない。









この時、あたしは恋だとは思わなかった。ただの憧れだと思った。





もしあの時、自分の気持ちにもっと早く気付いてたら、何か変わったのかな。






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