船の旅は、なかなか楽しい。色々な島に降りられるから、たくさんの人に出会うこともできる。 ただ、自分が海賊ということもあってあまりいい印象は持たれてはいないと思う。 だから島へ降りる時は、自分が海賊であると言うことをできるだけ隠すようにはしている。 海賊が嫌なんじゃない。今の仲間が嫌いなわけじゃない。人との接触を失くしたくないだけなんだ。 剣士 「おう。降りんのか。」 私が船を下りようとしていた時、ふと後から声をかけられた。 あまりにもいきなりだったため、驚いて振り返ってしまった。 「…ゾロ!もう…びっくりするじゃないの!」 わりぃな、とあまり悪ぶれる様子もなく淡々とゾロは私に告げた。 いつものごとく、ゾロは大事な三本の刀を腰に差していて、その中にはやっぱり”雪走”があった。 私はその雪走を見るたびに、いつもチクリと胸が痛んだ。 雪走は、ゾロの親友の形見の刀らしい。でも私の胸中は穏やかではない。 少し前にその親友の話を聞かされた時、ゾロはまだその親友が好きなんだなと思った。 だから私の入り込む隙はないんだと、あまりにもリアルに実感してしまったのをまだ覚えている。 好きな人に、好きな人がいる。そしてその好きな人の、好きな人が亡くなっている。 心からその人を消すなんて、無理に決まってるじゃない。 人間は亡くなった人をいつまでも思い出す。特に好きな人なんか、その心の中から消せるわけじゃないじゃない。 そして、私なんかが……。 ゾロを思う気持ちは人一倍強いと思う。 けれど、ゾロがその親友を思う気持ちには劣ってしまいそうだ。