気が付けば私は一人だった。








19 「心痛いよな」









ガラガラ、と教室のドアを開ければ、それまでにぎやかだった教室が、シンと静まり返った。

それはいつものこと。別にいじめられている訳ではなかった。ただ単に、入り込めないだけだった。


一斉に、私の方へと振り返った顔は、とてつもなく冷たく感じた。




私が席につくと、何もなっかったかのようにまた話し始めた。

もちろん私に声をかけてくれる人などいない。




「おっはよー!!」




勢いよく教室に飛び込んできたのは、お調子者のだった。

皆は話しかける。とても明るく、楽しそうに。

しかし、は先ほどの余韻に気づいた。


「なーんか、皆暗くねぇ!?」


「んなことないよー」


「んー?そうかー??」



あたしがさっき来たからだって。それくらい気づけよ、バカ。






いつもどうすれば皆と話せるか、そればっかりだった。

"一緒にご飯食べよう"とか"一緒に帰ろう"とか、考えてみればとても簡単なことなのに、あたしにはそれがどうしても出来なかった。

元々人と話すのが苦手な上に、長くストレートな髪型。

     


"冷たい"



そういう印象があるのは間違いないのだろう。




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7限が終了し、HRも終わり、いつもどおり何もなく、必要以上の会話はせずあたしは帰る。

一緒に帰る友達なんかいない。





「なぁ、。話したいことあるからちょっと残っててくれる?」



頭上から聞こえた男の声。面倒くさいと思いながらも振り向けば、それはだった。



「何の用?」



「まーいいからいいから」




クラスの全員が帰る。必然的にあたしとの2人になるわけで。



「で、何?」



あたしが切り出すと、は困ったように頭をかいた。



「用ないなら、あたし帰るけど」



あーこんな態度がいけないんだなぁ と思った。

でも今更、なんて思う自分がいた。




「なんでさ、そんなに話してくんないの」


少し悲しそうな顔をして、目を伏せたがいた。

こんなを見たのは初めてで、なぜかあたしは正直驚いた。

いつもへらへら笑ってるコイツも、こんな顔するんだ…。



「いつの間にか…1人になってた。

 友達っていうのが何か分からなくて。どうやって付き合っていいのか分からなくて…。

 全部1人で抱え込んで…本当は苦しかった」



そうしたらは悲しそうな顔をして、あたしにこう言ったんだ。


「心…痛いよな…」


あたしは驚いた。まさかにこんなこと言われるなんて。

こんな、あたしに。


思わずあたしは声を上げて泣いてしまったんだ。

初めての理解者が出来た気がして。

冷め切った心が、底からじんわりと温かくなるのを感じた。


*END