離れたくなんかないよ


先輩、




10 卒業式と涙





桜もまだ咲いていない、この季節


なのに、あたしは大好きな先輩とさよならしなくちゃいけない。


あたしは2年、先輩は3年。


学年が違うと、こんなにも切なくて、苦しくて。






あたしが1年だった頃、先輩に一目惚れをして、何の進展もないまま、卒業式。


早すぎるよ、あたしまだ何もしてないのに。


まだ先輩に気持ち、伝えてないのに。








今にも泣き出しそうな気持ちで、あたしは前にいる先輩を見つめた。


周りの女子は、泣き始めてて、その中で先輩は、ぼーっとどこかを眺めてた。



先輩とは接点がないから、もうこれでお別れなんだって思うと、悔しくて。


あたしは冷え切った体育館で、冷え切った右手をぎゅっと握り締めた。








「3年2組、」


「はい」


澄み切った空間に、先輩の声が響き渡る。


あたしも泣き出しちゃいそうで。唇をかみ締めて、思わず下を向いた。


あたしは、このままでいいの?あたしの恋は、これで終われるの?


こんなんじゃ、未練残ったまま、忘れられなくなるのがオチなんじゃないの?


あたしの気持ちは、その程度だったの?そんなんで諦められるくらい、ちっぽけだったの?


違うじゃない。あたしは先輩が、大好きじゃない。駄目だよ、このままじゃ。







------先輩に、気持ち伝えよう------






あたしはそう決めて、もう一度先輩を見つめた。


どことなく、先輩も唇をかみ締めたような気がして。


違う。先輩に卒業されるあたしよりも、卒業する先輩のほうが辛いじゃない。


何考えてたの?自分ばっかり辛いような気持ちになって。


あたしは笑顔で、先輩たちを送り出してあげなくちゃ。















「卒業生が退場します。拍手でお送りください」














先輩たちを送り出したあと、あたしは走って先輩のあとを追った。











「…先輩!!!」








先輩の周りには、ほとんど人が居なくって。


先輩は驚いた顔で、あたしのほうを振り向いた。





「あ、あの…」





緊張して、上手くしゃべれない。


手足が震える。顔、あげらんない。でも、言わなきゃ…。






「2年のって言います。あの…えっと…」





ほら、あたし頑張れ。たった2文字"好き"って、ほら。













「1年のときから、先輩のこと好きでした」














泣くつもりなんかなかったのに、暖かい涙があたしの頬を伝って。


ただ気持ちを伝えるだけで良かったから、これできっと諦められるから。






ふわっとあたしの頭に、先輩の手が触れた。









「ありがと」






そう言いながら、頭を撫でてくれた。








「卒業おめでとうございます」






涙を拭いて、笑顔を作ってみた。今なら、心からそう思えるから。


嫌な気持ち、何一つなく言えそうだから。








「マジありがと。これさ、良かったらもらって」







そう言って、第二ボタンをちぎって、あたしの手の中に入れてくれた。



あたしは嬉しくて、やっぱりまた泣いてしまって。


あたしが泣き止むまで、ずっと頭を撫でていてくれた、先輩。


大好きです、ずっと大好きです。













予想通り、あたしは先輩の彼女になれなかった。あたりまえだけどね!


それでもあたしは、告白してよかったと思う。


あの時ちゃんと言ってなかったら、すごく後悔していたと思うから。







いつまでも、先輩のことが大好きです。













END



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リクエストっつーかUPして欲しいっていう、要望があったので、書いてみました。

この小説で言いたかったことは、「何もしないで終わらないで欲しい」ということです。

絶対、後悔だけはして欲しくないです。

少しでも、勇気になったら と思い、書きました。