聞こえるのは





波の音。













08 修学旅行の夜













今、あたし達は修学旅行として、沖縄に来ている。









せっかくなんだし海外でも・・・と皆ブツブツ文句言ってたけど、








あたしは沖縄の海が大好きだから、正直嬉しかった。












「修学旅行」なんだけど、あたし達の学校は全然学習とかなくって







色んな所を回ったりして、遊びっぱなし。














楽しくていいんだけど。
















でも、そのせいでビーチがうるさくって、海を見つめられるような感じじゃなかった。
















だから、あたしは「夜」ということを利用して、ビーチに来ている。












本当はホテルから出たら駄目なんだけど。








皆は夜遊びにいってるから、ビーチは人が全然いなくって静か。





砂浜に座って、海を眺める。






波の音しか聞こえない。











あたしのひと時の幸せ。




























「あれ?そこにいるの誰?」












あたしの幸せはコイツのせいで一瞬にして奪われた。













「あ〜、さんじゃん?」










あーコイツ・・・確かクラスにいたなぁ・・・。









おちゃらけ者の・・・皆に「」って呼ばれてたっけ?









「あーって呼ばれてる人?」













「何それ?名前覚えてないわけ〜?」













ケラケラ笑うソイツ。














覚えてないって言ったって仕方ないじゃん。




あたし男なんか正直興味ないし、名前覚えるの苦手だし。







ってか何気に横座ってるし。













「うん。あたし元々、名前覚えるの苦手だし。ってか何で横座るかな。」













第一なんであたし、とか言う人としゃべってんだろ。












「そうなんだ?俺はすぐにさんの名前覚えたけど?横座るの?まーいいじゃん。」











まーいいじゃんって・・・。




あたし、初日に何か変なことしたっけ?





あー、そういや始業式に立ちながら寝てたなぁ・・・。















「何で?あたしの名前なんか覚えたって意味ないよ?」

















「大有りだって!さんってクールだけど可愛いって有名だし。」













クールと可愛いって正反対じゃない?











「それはどーも。って、そんなこと言われても嬉しくないんだけどね。」














超本音。




男なんかどうでもいいよ。





今のあたしの生活には関係ないし。














ってかって人、黙っちゃったし。














「どーしたの?って人。」














肩をポンポンってたたこうとしたら、いきなり腕を掴まれて










「なぁ、そのって人って言うのやめろよ。」














すっごい真剣な顔で言われて、不覚ながらにも一瞬ドキッとした。
















「じゃ、何て呼べばいいのよ。」















そうだよ、クールって言われてたんだから、クールに保たないと。

















「って呼んでよ。さんに呼んでもらえたら、俺超嬉しいんだけど。」
















は?嬉しい意味が分かんない。













「別にいいけど・・・。」















「じゃ、言ってよ。」













何言い出すの?コイツ。
















「って言ってくれたら、俺もいーこと言ったげる。」














は?何で名前呼ばなきゃいけないの?










でも、ソイツの顔にはふざけてる感じも見えなくって。














また真剣な顔で。またドキドキしちゃって。




















「・・・・・・・・・・・・・・。」















気に食わないって感じで言ってやったけど、って妙に呼びやすくって。




2回も呼んじゃった。










そしたらは、満足そうにニッコリ笑って














耳元に声を流してきた。




















「めっちゃ可愛いよ、。俺、のこと好き。」

























修学旅行の想い出になったのは、










夜のビーチでのその出来事でした。