----walk with... 「なーその先々歩く癖、やめてくんない?」 さっきから、あたしの彼氏は不機嫌だ。 単純に、一緒に歩きたくないのだ。 「そんなに俺と歩くの嫌?」 普通ならばううん、と答えるのだろうが、あたしとコイツの付き合いは半端ではない。 あたしは「うん、」とだけ答え、また先々と歩き始めた。 あたしが先々歩くのにも、きちんと理由はある。 コイツはモテるのだ。その上、本人は全くそのことに気づかず、愛想を振りまいているのだ。 彼女のあたしとしては、モテることだけでも嫌なのに。 それに、付き合っているというのだけでも色々言われるのに、一緒に帰っていちゃつきでもすれば、物でも飛んでくるんじゃないだろうか。 「何で?俺悪いことした?」 そうだよ、お前が悪いんだよ!あたしも大分悪いけどさ。(いや、あたしが悪い! 「周りに、付き合ってるってのを否定される感が好きじゃない」 さらり、と言ってみた。本当はこんなことだけじゃ伝わらないだろうけど。 こんなことだけじゃ、ないのだけど。 しかし、コイツはあたしの悩みを一瞬にして吹き飛ばしてしまったのだ。 「誰に何言われても、俺がオマエを好きってのだけでいいじゃん」 歯を見せながらにかっ、と笑うコイツに、あたしは負けた気がした。