息が白い。ブーツは足首辺りまで、雪で埋もれている。

周りを見渡せば、カップルカップルカップル。

・・・馬鹿らし。行こ・・・




White Christmas




それはクリスマスイヴの前々日。終業式の日。


「きゃー、君に誘われちゃった!」


なんて、クラスの女子が叫んでた。

へーあのが、なんて余裕ぶってる暇はあたしにはない。

は隣のクラスの男子で、まあ仲は良くて、話しやすくて、あたしの好きな人。

もちろん 誘われる、なんて期待はしていなかったけれど。


---こうも露骨に言われちゃ


結構きついものだ。ましてやそれが、自分の嫌いな人なのだから。

折角・・・塾も休みなのにな、と考えては見るけれど、今更を誘うわけにもいかない。

友達はみんな彼氏持ち。いつの間にか、あたしだけがフリーに。

男なんかいらない、と言っていたでさえ、に誘われ2人で遊ぶことに。

バイトを入れようかな、と思ってはみるが・・・さすがに寂しい。

両親に甘えて、ふぐでも食べに行こうか。何て考えるあたしは、親父化しているのかもしれない。

結局、部活はないし、バイトも入れられなかったし、親に甘えるのも失敗したし。

スケジュール帳には、24日、25日のみ、何も予定が書かれていない。

他はびっしりと「塾、10:00から!!」などと書いているのに。







そんなこんなで、ついに来てしまったクリスマスイヴ。

早く起きるのも馬鹿らしく思え、12時に起きた。目は10時くらいに覚めてはいたけれど・・・

親は2人で1泊2日の温泉旅行。全く、暇なものだ。

娘の可愛い甘えも押さえつけ、2人で温泉旅行など。ついでにあたしも連れて行ってくれて良かったのに。

机の上にはお金、と朝食。ああ、ご飯自分で作るの嫌だな。と駄々をこねても無駄。

とりあえず、作ってあった朝食をレンジにかけ、さっさと済ませてしまう。

やることもなく、勉強する気にもならず、だらだらと暖房の利いた部屋で床に転がりながら、漫画を熟読。

時計を見ればもう6時。そろそろ夕飯を作らなくちゃいけない。

のろのろと立ち上がり、冷蔵庫を開ければ


「何にもないじゃんか」


どうやらあたしは、自分で買い物をして、炊事して、掃除も洗濯もしなければいけないらしい。












「いらっしゃいませー」

近所のスーパーで、さっさと買い物。普段はあまり炊事はしないが、まあできるほう。

よし、今日はハンバーグにしよう。とミンチを手に取ったが、どうやらここの肉は美味しくなさそうだ。

面倒だが、やはり1人で食べるのだから良いものを買ってもいいだろうと思い、駅前の大きなショッピングセンターへ出かけた。

時間は7時。辺りは暗く、イルミネーションがチカチカ光る。


----ああ、寂しい


こういうときに思い出してしまうのは、やっぱりとあの子。

2人は手をつないで、楽しく過ごしているのだろうか、と考えると嫌になる。

わけもなく、その目の前にあるツリーに魅了され、フラフラと近づいていった。

昨日から降り続いた雪。まだ降り止まない。降り積もった雪で、足首までずっぽりとはまってしまう。

辺りは手を繋ぎながら、にこにこと笑い、愛しそうに見つめ合うカップル。

人というものは、どうしてこんなにも変わることができるのだろうかと思う。

普段は厳しい人でも、恋をすると甘くなるんだから。


----馬鹿らしい。さっさと買い物して、早く帰ろ。


あたしがツリーの前から立ち去ろうとしたとき、


「!」


と聞こえた。くるりと振り返ってみれば・・・誰も居ない。

幻聴かな、の声に聞こえたんだけどな。はは、と苦笑い。



ざくざく、ざくざく



雪はまだ積もったまま。はらはら落ちる雪は冷たい。






「!!」





確かに聞こえたの声。

2度目の幻聴はないだろう、と考え後ろを振り向くと、息を切らしたがいた。

幻聴の次は、幻覚なのだろうか?でも、はちゃんと居るように見える。

そっと、彼の服をつかんでみる。きちんと触れていて、あたしは幻覚なんかじゃないと理解した。



「・・・何してんの?」



白い息を吐きながら、顔をくしゃ、としながら笑うはやっぱりかっこいい。



「や、いきなりが現われたから、幻覚かな、と」

「いやいやいや、俺ちゃんといるから」



お前大丈夫なの?、なんて笑われているけど、あたしは何でがここにいるか分からなくて。

だって、はあの子を誘っていたじゃない。

あの子だって、すごく喜んでいたじゃない。なのに 何でここにいるの?




「マジビックリしたって。俺ロンリーだから、1人で寂しくツリー見にきたらいんだもん」

「え、はあたしのクラスの子、誘ってたじゃない?」

「は?のクラスの奴?」

「うん・・・すごく嬉しそうだったよ?」




俺、誘った覚えないんだけど・・・と口ごもる。

あたしも一緒になって考える。が忘れてるだけなんじゃないの?




「あ」

「何?」

「多分、1コ上の奴のことだと思う」

「先輩なんていたっけ?」

「うーん、俺の兄貴なんだわ」




・・・は!?

にお兄さんなんていたっけ?あたしが知らないだけか・・・な?




「兄貴、"好きな子とデート"って張り切って朝、出て行ったから」

「う そ 、」

「大マジ。だって俺、今日のこと誘ったのに、返事来なかったし」




急いで携帯をチェックしてみる。

新着メール1件

"もし1人なら、今から会わん?"





「だからー、超ヒマだったわけですよ」

「はい・・・ごめんなさい」

「まーでもが1人でいてくれて良かった」

「え?」

「だって、男と2人でいるとこ見たら、俺失恋じゃんか」

「ちょ、ちょっと待って!話が見えない」




はぁー、とが大きなため息をつく。




「だから、のことが好きだ、って言ってんの」





柄にもなく、顔を真っ赤にして俯いてしまった彼に、思わず笑ってしまった。










「・・・あたしもだよ」





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Happy Merry Christmas!!って言っても、ちょっとばかり早いですから 笑

もうすぐクリスマス、ということなので書いてみました。えええ、無駄に長い。

あたし的に、背景がかなり好きです。黒×ピンクは最高だと思う。(ぇ

皆さんも、よいクリスマスをお過ごしください。