「さんも来ない?」 「あ・・・私は…今日、用事あるんだ」 「そっか・・・じゃあまた今度遊ぼうね、ばいばい」 軽く笑って、手を振りながら"クラスメイト"を見送った後、 がらんとした教室を眺めながら、私はまた自分の席に腰を下ろした。 嫉妬、孤独 まただ。どうして私はいつも、断ってしまうのだろう。別にみんなが嫌いなわけじゃない。 むしろ好き。なのに上手く付き合うことができない。理由は分かりきっている。 心の傷が癒えてくれない。中学を卒業した今でも、あの時の記憶が鮮明に蘇える。 一人だけ置いていかれる孤独感、みんなに対する劣等感、嫉妬、憎悪。ただ、苦しかった。 心開いて話してたって、向こうは私のことを拒絶する。 1人の子が無視しだすと、まるで伝染病を扱うような目で私のことを見てきた。 私が悪いわけじゃなかった。向こうが悪いわけじゃなかった。ただ根本的に合わないだけだった。 どうして?それなら最初から、心を閉ざして生きたほうが楽じゃない。苦しくなんかないじゃない。 そう考えるようになって、誰にも本音を言えなくなった。気がついたら私は、一人ぼっちだった。 そのまま周りのみんなと過ごすと考えるだけで、気分が重くて。私は今の学校に入学した。 そんなことを知らない今のクラスの子たちは、私のことを受け入れてくれた。 私も心を開きかけた。だけど・・・また同じようなことが起これば、私はきっと立ち直れない。 それだったら深く関わらないようにしようと。深く関わらなければ、深く傷つくこともないだろうと。 だけど、それが間違いだと気づいたときには、少しばかり遅かった。 私は、クラスメイトとの「友達としての付き合い方」が分からなくなっていた。 どうしたら相手に嫌われずに済むか、どうしたら裏切られずに済むか。 そんなことばっかり考えて、「友達」という存在さえ、何なのか分からなくなっていた。 「――――なぁ、あんたいつまでそうしてんの?」 後ろからサラリと聞こえた男の声。後ろを振り向けば、クラスメイトのがいた。 は私と中学の時クラスが同じで、元気だけが取り柄みたいな部活命な人。 この高校は、私の地元の学校でもないし、むしろ下宿しなればいけないような場所。 正直私は、同中出身の人にこの学校の志望者が居れば、また別の高校に変えるつもりだった。 どうやらはスポーツ推薦だったらしく、同校出身の人の志願者はいなかったから安心してた。 「何が?に関係ないでしょ」 「お前さ、周りの人のこと全然見てないだろ」 この人に、あたしの何が分かるって言うの?あたしの気持ちなんか、微塵も分からないくせに。 今の私は、周りの人を見れるほど余裕なんかない。それくらい、同中出身だったら分かるでしょ? 私が今までどんな扱いを受けてきたかも。それを見て見ぬ振りをした教師たちも。 あたしは右の掌をきゅっと握り締めた。 「今のクラスの奴らだって、みんな遊びに誘ってんじゃん」 「女子が嫌いな女子を遊びに誘うはずないの、お前が一番よく分かってんじゃねえの?」 「ちゃんとここにいるじゃん、お前のこと見てる奴。俺も含めて、さ。」 そう・・・だ。あたしはいつも被害者で、周りの人への対面ばかり気にして、優しい目を見れずにいたんだ。 あたしがこんなんだったから、みんなの優しさに気づけなかったんだ。 だけど、だけど 「また裏切られそうで 恐い」 そんなことしない人たちだ、って信じたい。だけど、やっぱり恐い。 あたしの深い深い傷は、いつまでも癒えてくれない。 「俺がいるから。大丈夫。傍に居るから」 そう言われながら肩を抱かれ「うん」と答えてしまったのはきっと、 前からのことを見てたっていう証拠だよね?