ばかばか、ばーか。のばーか。でも、大好きなの。

その屈託のない笑顔とか、人懐っこい性格も、周りの人に好かれているところも、大好きなの。

そして、そのちょっと人とは違った行動も、ばかで大好きよ。






ばーか






あ……だ……。

三時間目が終わった後の少しの休憩。

次の授業の準備だとか、トイレに行ったりだとかで少し教室がざわついていた。

そこに突然響いた大きな声。


「おいおい。、現代社会の教科書貸してくれ!」


その大声を発した人物は、あたしの好きな。

一年生の時にすごく仲良かったんだけど、二年に進級してクラスが離れて、挙句の果てに三年は校舎が別。

メールもしていたのに、今は全くといっていいほどしていないし、話しもしてない。


きっと今話しかければ、多分話はしてくれるんだと思う。

けど、あたしはそこまで積極的ではない。


好きなとこといえば、部活で点入れたときのあの笑顔かな。

あたしがマネージャーだったら、あの笑顔をたくさん見られるのに。

性格以外の面を言えばこんなところかな。まぁ一番の理由はやっぱり、一年の時のあの記憶が離れてくれないからかな。





「えー!!お前、現社持ってきてねぇの!?誰かー、置き勉してねぇ??」




の声があたしのめくるめく回想を止めた。

あたし、現社置き勉してるけど。だけど、ここで「あたし持ってきてるよ」なんてこと言えない。

あの関係が今もずっと続いていたら、全然ここまで悩まなく話しかけれていたのに。

もっと積極的だったら良かったのに。そしたら、普通に話が出来るのに。

今ここで、に話しかけることも出来るのに。

自分に対してもっと積極的になれよ、って叱ってみるけど無理なものは無理だった。


もう、この自分の性格がいやだよ


あたしはこれ以上、この場にいたら自分をもっともっと責めてしまいそうで、教室を出ようと思ったとき。

なぜだか、本当にどうしてかは分からないけど、に声をかけられた。



「おーじゃん!なな、現社持ってねぇ??俺、忘れて困ってんだわ!」




え…??あたしが、声かけられた、んだよね?

やや、固まってる場合じゃない。普通に接するんだ、普通に。

でもあたしの心臓は、いきなり声をかけられた驚きと、話しかけてもらえた嬉しさでドキドキしていた。




「あ、あるよ!ちょ、ちょっと待ってね」




あたしは急いで机の中から現代社会の教科書を取り出して、に手渡した。

その時、少しだけ手が触れてドキドキしたのは、言うまでもない。


「今日授業ないから、今日中に返してくれたらいいから」


「おお、サンキューな」


そう言って笑顔で手を振って、廊下を駆けていった。

あたしも少し微笑んで、小さく手を振り、と別れた。

















「これ、ありがとな。」


授業が終わった後、すぐに教科書を返しに来てくれた。

またよろしくな、とか言ってる彼に、ちゃんと持ってきなさいよと笑いながら答える。

なんだか、少し昔に戻れたみたいで、なんだか気持ちが温かくなった。

それでも、もうチャイムが鳴ってしまう。

そしたら、あたしがと話す機会は、もうほとんどないかもしれない。



キーンコーンカーンコーン



周りの人たちがガヤガヤと、自分の席に戻り始めた。

あたしもそろそろ、席に戻らなければ、先生が来てしまう。

じゃ、またな、とそう言った彼と、またしても寂しい気持ちを残しながらバイバイと手を振った。

少しでも余韻に浸っていたくて、私は先ほど貸した現社の教科書をペラペラとめくり始めた。

すると、見慣れない字で、何か書いてある。

あたしの字ではない。少し乱雑な、決して綺麗とは言えない字。

でも、そこに書いてある言葉は、あたしの心の奥に響くものと、じん、と来るものがあった。




“今日はマジでありがとう。助かった!

 それと、わざわざにコレ借りたのは、が好きだからです。

 良かったら返事聞かせて。    ”





ばーか。あたしも昔から好きだよ。

あたしだって、すごく悩んでたんだから。

ずっとずっと悩むくらい、好きなんだから。


今度はあたしが教科書を借りて、返事を書かないとね。



さて、この気持ちをどんな風に言葉に紡ごうか。




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RIHOさんとぁやさんからのPLANのリク。

お話がすごーく似ていたので、一話にまとめてしまいました。

申し訳ないです。今回は何かあたしにしては珍しいお話でした。

気に入っていただけると嬉しいです。


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そこまでお話は変わっていませんが、少し書き方を変え、空白スペースを削除しました。

*2008.11.30(加筆、修正)